Amboyna's Color

蒼の輪郭

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古より青色は様々な言葉で呼び表されてきた。

紺色、藍色、群青色、縹、碧、アズライト、ウルトラマリン…

そうした呼び名の中でも、私は「蒼」という言葉にひどく惹かれる。




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なにか突き抜けたような輪郭を持つその文字が、

沖縄で目にする様々な青色を表現するのに、

なんとなくしっくりと当て嵌まる気がするのだ。




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かつて八重山に、「ザン」と呼ばれる人魚がたくさん住んでいたという。

彼らは水中と水面の境、抜けるような蒼い世界で生きていた。

人間がこの海にやって来るよりもずっと前から、

沖縄がまだ大陸の一部だった頃から、彼らはこの世界の住人だった。




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彼らが見ていた蒼色とは、いったいどんな蒼だったのだろう。

それは例えば琉球ガラスの玉や、染め布のように輝いていたのだろうか。

その色は月夜のように深く、あけもどろのように清らかに澄んでいただろうか。




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蒼は死者の色であり、忌禁の色でもある。

同時にこの世ならぬ神秘に心を誘う色でもある。

いつしか彼らはその蒼の中に融けて、消えてしまった。




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もしかしたら「蒼」という色は、

人間のために用意された色ではないのかもしれない。




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上では人魚と書きましたが、
八重山で呼ばれる「ザン」とはジュゴンのことを指すそうです。
残念ながらジュゴンはレッドデータブックに載ってしまうほど数が減ってしまい、
今ではめったに見ることはできないみたいです。
彼らが「蒼い世界」で生きていたかどうかは私の創作なので分かりませんが、
かつて餌が豊富な八重山の海で、のんびり平和に暮らしていたのは本当です。
いつの日か、今よりもずっと増えた彼らに逢ってみたいものですね。

最後に私がこの漢字が好きな理由をもう一つ。
どこかでジュゴンの写真を見たら思い出してください。

「蒼」という漢字、なんとなくジュゴンの顔と似ていませんか?
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by amboina | 2010-05-18 02:56 | 八重山