Amboyna's Color

深 淵

f0236145_1059265.jpg




南国の日差しの下で、青い海と白い砂浜が広がり

年間数十万人という観光客が訪れるこの島にも、

踏み込むことを躊躇わせる場所がある。




f0236145_11084.jpg




そのひとつが島の重要な祭事や祈願が行われる

「御嶽」という聖なる場所だ。

神司と呼ばれる神から選ばれた特別な女性が代々守り、

祖先や御嶽に祀られた神と交信する拝所である。




f0236145_1112675.jpg




島の人々は日々の生活や節目の年などにこの御嶽を訪れ、

供物を献上し祈りを捧げ、神司を介して神と会話する。

何百年もの間、そうして幾万の願いを常世に送り届けてきた場所だ。

当然、観光客や物見遊山の輩が気安く立ち入ってよい場所ではない。

少なくとも、私は立ち入ろうという勇気がわかなかった。




f0236145_1123621.jpg




御嶽の入り口には鳥居が立てられており、

そこから珊瑚砂を敷いた道が深い森の奥の拝所へと伸びている。

はじめてその鳥居の前に立った時、空気が違うと思った。

ざわざわと草木の揺れる音やカラスの鳴き声はするのだ。

しかし入り口から数歩先、手を伸ばせ届くような距離に

見えない静寂の壁のようなものが確かにある。




f0236145_112230.jpg




f0236145_1121621.jpg




結界とも言うべきその壁が、外界と聖域とをくっきり分けていた。

これを押し分けて先に進もうなどとは、とても考えられなかった。

後に神司の手伝いで、特別に中へと入らせてもらった時も、

やはり私のような不信心者を堅く寄せ付けない、

底知れぬ空気がその場に満ちていた。




f0236145_1141870.jpg




この島と、この島の人々にとって、

神の住む深淵とはすぐ傍らにあるものなのだ。




f0236145_1144457.jpg








そうして島人が代々大切に守っている聖地ですが
哀しいことに、その御嶽に入り込む観光客は少なくありません。
まさに神をも恐れぬ行為な訳ですが、いくら看板を立てようと、注意されようと、
「せっかく来たんだから」と侵入する人が後を絶たないのです。

「そういうお前だって、観光客だし無信心者じゃないか」
と言われたらそれまで。返す言葉もありませんが、ルールはルール。
それもけっこう最上級のルールだと思うのです。

やたら聖域に踏み込んで、ずいぶん怖い思いをした人もいますしね。

f0236145_1117065.jpg

[PR]
by amboina | 2010-05-24 11:20 | 八重山