Amboyna's Color

蒼 茫

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遠くの森がざわめき始める零時過ぎ、

街灯が照らす灯色の道を辿ってひとり集落を抜け出した。

宿の庭では旅人たちの会話がまだ賑やかに続いている。




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月は高く天頂にあった。

流れる雲の合間からは、微かにこぼれるような星空が覗いている。

足の向くまま、真昼のように明るく浮かび上がった長い下り道を降りてゆくと、

そこにはひっそりと静まり返った蒼い夜の港が広がっていた。




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観光客が行き交う昼間の喧噪は、そこにはない。

夜景見物の宿泊客も、夜釣りに勤しむ島人の姿も見当たらない。

静かな月の光の下に照らし出された港の全景はまるで、

昼間の太陽に墜ち伏せられた巨鳥の骸のようだ。




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赤瓦を載せた東屋が防波堤に向かって虚ろに伸び、

真っ白な浮き桟橋が細波に揺られて微かな軋みを響かせている。

その遥か海を隔てた対岸には眠らない主島の灯りが瞬いていた。




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そして一面の蒼の世界だった。

耳を貫く静寂に満ち満ちた蒼の世界である。

流れる雲間から月光が落とす影が足下で揺ぎ、

今にも蒼の中へ融け消えそうに震えている。




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昼間の熱が残るコンクリートの上に座り込み、

私は夜の気配を深く吸い込んでみた。

肺の奥まで染めかねない、その濃密で温かい大気は、

強い潮の香りと微かな錆の香りに満ちていた。




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振り返ると、背後の島影の奥底に集落の灯りが小さく浮かんでいた。

蒼一色に沈む世界に灯る温かなその灯りが、

けっして戻ることができない遠い星の瞬きのように見えて

どこか恐ろしかった。




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島の蒼い絶景を独り占めシリーズ第2段です。

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今回紹介したこの港は、島々を巡る高速船が一日中ひっきりなしに行き交い、
凄まじい数の観光客が毎日利用する島の玄関口です。
港とはいえ、そこは沖縄八重山ですから透明度は抜群。魚も良く釣れたりします。
しかし夜、それも深夜ともなれば昼間の賑やかな姿は一変。
恐ろしいほど静かな夜景スポットへと変貌します。
上でも書いたように大概は夜釣りや夜景散策の人影がちらほら見えるんですが、
この写真を撮った時は完全な無人状態で、人っ子一人いませんでした。
しかも昼間のように明るい満月の下、幻想的を通り越してちょっと怖かったです。
でも対照的な世界って楽しいもので、いつもは賑わっている場所だからこそ感じる、
静けさの格差がこの夜は妙に新鮮でした。

それからお解りかと思いますが、実際の風景はこんな色ではありません。
いくら満月が凄くても黄泉の国じゃあるまいし、ここまで蒼くはなりませんよね。
あくまでもこのくらい蒼く感じたんだなぁというイメージで見てやってください。
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by amboina | 2010-09-15 14:27 | 八重山