Amboyna's Color

幻の馬

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それは突如として始まった。

鮮やかな紫の頭巾に白装束、袖をまとめた赤い襷。

腹には馬頭を括り付けた珍妙な出立ちの男たちが

賑やかな音楽と共に軽快に踊り舞っている。




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腹の馬頭に結んだ手綱を雄々しく掲げ、

馬に跨がった武士の姿を模して時に激しく、進んでは退き、

威声をあげては宙を舞う数十人の男たちの影。




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彼らが御する幻の馬の口がいなないた。

見えない後脚を蹴り上げ、

在るはずのない鬣が島の風に揺れる。




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男たちはその荒馬を自在に乗りこなし大地を跳ね、

雄々しい掛け声と共に意気揚々と喝采の中を進む。

嵐を押しのけ、陽射しを呼び込んだ庭の芸能が

やがて幕を下ろそうとしていた。




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その最後の瞬間を見守る天に祈りを返すように、

男衆の足はひときわ高く上がり

幻の馬とともに軽々と宙に舞い上がった。




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「種子取祭」第五弾です。

「馬乗者(んーまぬしゃー)」は庭の芸能の最後を締めくくる一風変わった演目です。
古くは琉球王朝時代に存在したチョンダラーという芸能集団から学んだとされるこの踊りは、
荒馬を乗りこなす勇敢さを表したとも、威張りくさった騎馬武者を風刺したものとも謂れており、
揃いの白装束を纏った男の演者全員が一糸乱れぬ足並みで舞い踊る姿が
豪快&ユニークで「種子取祭」ではとても人気があります。

しかしいくら人気があっても、腹に馬の飾り物を付けて跳ね舞う姿は正直滑稽です。
さぞや演じる人間は恥ずかしいのだろうと尋ねてみると、その答えは意外や意外。
「これがけっこう楽しいんだよね」との事。
子供の頃から毎年観ていることもあり、上手く踊る先輩の動きを真似たり研究したりと
いたって前向きで熱心に取り組んでいるそうです。
鬼気迫る棒術から愉快な馬乗者まで、見事に演じきってしまう島の人間には
本当に頭が下がります。

さて、思惑以上に時間がかかってしまいましたが、
これにて屋外で演じられる「庭の芸能」も終わりです。
続いては幕内にステージを映し、いよいよ沖縄ならではの舞踊、演劇が
これでもかと披露される壮麗な「舞台の芸能」が始まります。
「まだ続くのかよ…」という声も何処からか聞こえてきますが、
なるべくコンスタントな更新をこころがけますので、
もうしばらくおつきあいください。
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by amboina | 2011-02-07 18:25