Amboyna's Color

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毒貝は真夏の島の夢を見る

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ちょっと旅に出てきます。

行き先は例によって沖縄です。




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沖縄はまだ梅雨も明けきっていません。

おそらく今月最初の旅は雨を楽しむ旅となるでしょう。




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明日からは沖縄本島にほど近い久米島に向かいます。

初めて訪れる島なのでとても楽しみですね。

知り合いの三線奏者が唄う「はての浜」という絶景地が

歌詞に違わぬ素晴らしい場所なのかどうか、

この目とカメラで確かめてきます。




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そして久米島から戻った翌週からは、

今年三度目となる八重山に再び渡ります。




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よくぞ飽きないものだとお思いでしょうが、飽きません。

その頃には梅雨も明けているでしょう。

ならばそこは一年で最も美しい季節。

あの原色の島々が私を待っていてくれるはずです。




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そんなわけで、

しばらくは帰ってきません。

お土産も買ってきません。

でも写真だけは沢山撮ってくるつもりです。




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それでは行ってまいります。




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by amboina | 2010-06-13 02:21 | 南方行脚

嵐の夜

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空港が閉鎖され飛行機の発着が停まり

離島へ向かう最後の高速船も欠航すると、

台風を待つ島は完全に孤立した。




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そうなると島に残った者がしなければいけないことは限られてくる。

風に飛ばされそうなものは片っ端から縛り付け、

雨戸を締め切った家の中に閉じこもって

亀のようにじっと嵐が過ぎるのを待つ準備を整えるのだ。




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昼を過ぎ、大粒の雨が降ってきた。

本格的な風とともに断続的に激しく屋根と雨戸をたたき続ける。

やがて雷鳴とも地鳴りともつかない轟音が島を包み込んだ。

今年最大規模に発達した台風の中心は

まぎれもなく、この八重山諸島の間近まで迫っているらしい。




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夜更け前、苦労して固く閉じた雨戸をこじ開け

不適な笑みをたたえた島人が顔を覗かせた。

今や雨風の地獄と化した外の様子をまるで気にするでもなく、

手に持った重そうな網をぐいと差し出す。

「風裏の浜でスル(キビナゴ)を穫ってきたから、食べろ」

何食わぬ顔でそう言い放ち

来たときと同じく唐突に嵐の中を去っていった。




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巨大な手が島をつかみ、力任せに揺さぶっているようだ。

赤瓦が軋み、遠くから木々の折れる音も聞こえてくる。

今や圧倒的な自然の力が小さな島を薙ごうとしていた。




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突如、警報を出し続けていたテレビのニュースが灯りと共にプツリと消えた。

潮が混じった海風に電柱の変圧器がやられてしまったらしい。

ロウソクとランタンを灯しただけの薄暗い屋内で、

残されたラジオの台風情報に耳を澄ませながら

風の音と蒸し暑さに堪える長い夜がこうしてはじまった。




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by amboina | 2010-06-11 01:03 | 八重山

嵐の気配

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チャンネルの少ない離島のテレビから不穏なニュースが伝わってくる。

何日も前から南海上で発達し続けていた巨大な低気圧が、

ついに今年13個目の台風へと成長したのだという。




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「今年の台風も大きくなるかもしれん」

そう不安気に話す宿の老夫婦の声を背に聞きながら、カメラを手に外へ出た。

今朝まで同宿していた観光客たちは、ほとんどが予定を繰り上げ

もっと大きい近くの主島へと避難していった。

宿に残ったのは覚悟を決めた私と、もう一人の常連客の二人だけである。




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薄闇の空を鉛色の雲塊が飛ぶように過ぎていく。

南からの風は、まだ穏やかながら粘り着くような湿気を含んでいた。

集落の中を歩く人影はほとんどない。




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ふいに強い風が吹いて、道端の芭蕉が大きく揺れた。

こんな風が、これから少しずつ間隔を狭めながら吹き続けるだろう。

そしてこの小さな島の何もかもを薙ぎ払い拭い去るまで吹き続けるのだ。




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不穏な静けさに包まれた集落を抜けて外周道路に出ると、

浜へと続く道沿いに立つ一本の木が、阻むように私を見下ろしていた。




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その姿に気圧され、先へ行くのをあきらめ引き返すと

近づく嵐を察したのだろうか、遠くの森をめざして歩み去っていく

一匹の猫とすれ違った。




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by amboina | 2010-06-09 14:54 | 八重山

ちいさな贈り物

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穏やかな海風が吹いている。

眼前に広がる西表島を回り込むようにやってる僅かに涼しい風は、

島の浜辺を撫で、灯台をかすめて北へと走り去っていく。




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そんな風に身を晒しながら島の外れで夕陽を待っていた。

この島の夕陽は水平線に落ちる。

海の向こうに島影が折り重なる通い島では、

望んでも見ることのできない夕陽が眺められるはずだった。




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崖沿いの荒れた草地に三脚をたてていると、

近づくけたたましい排気音と、はじけるような声が私を呼んだ。

友人の運転する軽トラックだった。

その荷台では二人の少女が手を振っている。




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草薮を踏みしだき笑顔で駆け寄ってきたのは、

昼間一緒にカメラを撮りながら遊んだ島の姉妹だった。

「おっちゃん、これあげる」

年下の妹がぶっきらぼうに、形の崩れた蚊取り線香の箱を私に投げてよこした。

振ってみると中でじゃらじゃらと乾いた音がする。

面食らって箱を見つめる私を、姉妹はニコニコと眺めていた。




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「昼間遊んでくれたお礼ですって」

運転席で微笑んでいる友人の言葉にうながされ開けてみた箱の中からは、

浜で拾った小さな貝殻を有り合わせの紐で結んだだけの

かわいいブレスレットがふたつ転がり出てきた。




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やって来た時と同様にけたたましく去って行く彼女たちを見送りながら、

沈む夕陽の中でその手作りの贈り物を眺めた。

綺麗な貝殻の表面には、開け損ねた穴の痕が幾つもついている。

きっと大急ぎで作ったに違いない。

手のひらの貝殻にあの二人の笑顔が重なる。

もう夕陽を撮ることなど、どうでも良くなっていた。




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宿に戻る途中の港の端。

夕涼みをかねた釣りを楽しむ少女たちの家族を見かけた。

茜色の空の下、吹き止みつつある潮風に乗って和やかな声が響く。

さざめく波の音と黒々と浮かび上がった島影を背に

最後の陽を浴びた睦まじいシルエットが四つ、

温かな影を延ばしていた。




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by amboina | 2010-06-07 21:47 | 八重山

海人の港

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八重山諸島の外れ、西表島を間近に望む鳩間島は

人口60名足らずの漁業の島だ。




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集落を区分する道は縦横どちらも十本に満たない。

その道々に素朴で生活感を漂わせた赤瓦の住居が身を寄せ合っている。

集落の周囲はうっそうとした自然に囲まれ、

どの道も数百メートルも進めば深い森へと行き当たってしまう。




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そして道を海へと下ると、そこには漁師達の生活の場である

瑠璃色の海と小さな港が広がっていた。

漁船やダイビングツアー船が停泊する古びた桟橋の向こうには、

各島を結ぶ高速船が横付けされる浮き桟橋も真新しく光っている。




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港であっても、その透明度は呆れるほど高い。

ヘドロや排水で汚れた内地の港湾とは比べようもない、

今すぐ飛び込んで泳げる海が防波堤に囲まれた湾内を満たしていた。




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人工の桟橋やテトラポッドと、魚が群れ泳ぐ豊穣の海。

対極にあるような二つの景色が渾然一体となって島に溶け込み、

理想郷のような景色を生み出している。




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陸揚げされた漁船の影に腰を下ろし、港を出て行く船を眺めていると

近くの空き地から楽しげな音が届いてきた。

島に移住した友人と、内地の三線弾きたちが集まって、

島人と即席の音楽会を開いているのだ。




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午後も遅く、その長閑な音と歌声を聞きながら

重くなった瞼を閉じようとしたとき、

瑠璃色の水面を叩いて大きな魚が跳ね上がった。




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慌ててカメラを構え起き上がると、

小魚を追う一匹の大魚がまるで宙を泳ぐように

水底の影を伴って明るい緑の中に融けてゆくところだった。




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by amboina | 2010-06-06 13:05 | 八重山

瑠璃色の島

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地元から移住していった友人を訪ねて、

その小さな離島に初めて降り立ったのは、

2年前の秋の終わりのことだ。




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石垣島から高速船で40分あまり、

輝くような瑠璃色の海に囲まれた鳩間島は

私の予想を遥かに超えた南海の孤島だった。




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今でこそ人気ドラマのロケ地として有名になり訪れる人も増えたが、

それ以前は観光客もまばらな過疎の島だったという。

そのためか、手つかずの自然と澄み切った海は、他の八重山の島々では見ることのできない

昔ながらの素朴な美しさを保っていた。




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島の中央近く、「中森」と呼ばれる鬱蒼とした丘には、

島と島の近海を航行する船を導く純白の灯台が聳えている。

灯台の丘を越えた先は、二本の轍が消えて行く匂い立つような密林だ。




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その灯台を眺めながら島をぐるりと一周する外周道路も、

ひと巡りするのに一時間とはかからない。




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しかし、なにより圧倒されたのはその海の色だった。

遥かな水平線の彼方に向かって、

ありとあらゆる緑の明暗が、刷毛ではいたように果てしなく続いてゆく。




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それはまるで印象派の画家が描いた絵画のようでもあり、

海神が機織った瑠璃色の王衣のように輝いても見えた。




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by amboina | 2010-06-04 14:10

ふこらさーゆー

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八重山の離島に移住した友人がいる。

外資系IT企業の職を捨て、恋人と別れ、生き甲斐だったバンド活動も辞めて

ただひとり、大都市から人口60名弱の過疎化が進む島に移り住んだ。




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もともと沖縄と音楽が大好きで、琉球民謡にもどっぷり浸かった男だった。

「いつかは沖縄で暮らしたい」

そんな夢みたいなことを口にしていた男だった。




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そんな男が数年前の初夏に八重山を旅した。

年に一度開催される離島の音楽祭に参加するためであったが、

その帰りの船の中で彼はもう移住を決心していたという。

彼はたった一度訪れただけのその島に魅せられてしまったのだ。




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はじめてその移住話を聞いた時、私をはじめ周囲は大反対だった。

初めての土地への移住というのは容易なことではない。

ましてや沖縄の離島で生活するなど至難の業だ。

せめて一年ないし二年は地元で猛烈に働き資金を貯め、

充分に計画してから行っても遅くはないだろう、と忠告した。




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しかし決断してからひと月半後、

彼は呆れるほど見事に身の回りを整理して島に渡って行った。

見送った我々には整理の着かない心配だけが残った。




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その年の夏の終わりに、私は彼に会いに件の島へ渡った。

驚くほど何もない静かな島で、彼は毎日島の魚を釣り干物を作っていた。




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次の年、干物を作っていた会社はなくなり、彼は無職となっていた。

「自分で作った店で商売がしたい」

見事に漁師焼けした顔を綻ばせて、彼は明るく夢を語り笑った。




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はたして数ヶ月後、三たび訪れたこの島で私が見たのは、

掘建て小屋のような飲食店を自力で作り上げ、

見た目は悪いが抜群に美味しいピザを作って暮らす、

元気で幸せそうな彼の姿だった。




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窓辺の特等席でそのピザを味わいながら、

私は彼の語る新しい夢の計画を背中で聴いている。

そして邪推な心配と説教を、見事に結果で返してみせた彼を

どこか腹立たしく、そして誇りに感じていた。




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by amboina | 2010-06-02 10:23 | 八重山

十五夜の呼び声

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南の空に秋の気配が深くなり、満月が空を駈け登る頃。

この島の三つの集落はにわかに活気づき始める。




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この島で年に数え切れないほど祝われる祭事の一つ、

島民、観光客を問わず島中が参加する勇壮な祭り

「十五夜祭」が始まるのだ。




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小雨が降りしきる空の下、祭りの開始を知らせる銅鑼が

島の方々から轟いてくる。




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やがて各集落の集会場から掲げ揚げた旗頭を先頭に、

揃いの法被を着込み隊列を組んだ島人が歩み出ていく。

道行きの銅鑼を盛大に打ち鳴らし、

島の中心に位置する小中学校の校庭へ向かうのだ。




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遠くから次第に近づいてくる三つの銅鑼の音が、

やがて耳を聾する共鳴音となり島の空から天へと昇っていく。

そしてその音を合図に、突然静かに雨がやんだ。




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校庭に三つの旗頭が並び立ち、人々の歓声が沸き上がる。

朗々と謡われる歌、演じられる狂言、披露される演舞の数々に

人々の笑顔と熱気が重なる。




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その笑顔を天から見守るように、

暑く垂れ込めた雲も風も歩みを遅め、

祭りの終わりまで、ついに一粒の雨も落とさなかった。




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by amboina | 2010-06-01 10:33 | 八重山