Amboyna's Color

静かなる足音

f0236145_9593653.jpg




一声、涼しげな少年の声が走り抜けていった。

ちりん、ちりん、ちりん

その声を追うように、やがて軽やかな鈴鐘の音が御嶽の庭に響き渡る。




f0236145_1042112.jpg




一足一足、歩みを刻みながら

賑やかな芸能に湧いた緑の広場へ、静々と羽織袴姿の男たちの姿が進み出た。

短い掛け声と突如鳴り響く鋭い太鼓の音に、

ざわめく会場はしばしの静寂に沈み込む。




f0236145_10345573.jpg




f0236145_1042314.jpg




大人達は威風堂々と、

白い鉢巻をきりりと締めた子供達も凛々しく太鼓を掲げ、

しっかり前を見据えている。




f0236145_1042766.jpg




f0236145_1042969.jpg




f0236145_1061193.jpg




単調に、しかしはっきりと

邪を払うかのような十七個の太鼓は鳴り響き、

幾度も共鳴しては静寂の隙間に呑み込まれ消えてゆく。




f0236145_1043495.jpg




f0236145_1043636.jpg




f0236145_104337.jpg




やがて僅かな太鼓の残滓と

大小の足音だけを芝生の上に残し

男たちの隊列は夢のように通り過ぎていった。




f0236145_1083145.jpg




f0236145_10104989.jpg




降り注ぐ10月の陽光の下

御嶽の木陰からレンズを通して見つめる私の目に、

彼らの赤い襷は痛いほど眩しかった。




f0236145_10438100.jpg


More…
[PR]
# by amboina | 2011-02-01 10:37 | 八重山

天と大地に吹く風

f0236145_8404781.jpg




晴れやかで高らかな声が跳ねる。

笑顔を輝かせた女性達が軽やかに緑の広場へと歩み出し、

芝を踏む沢山の足音が楽の音と重なり合った。




f0236145_8374926.jpg




f0236145_8393372.jpg




八重山上布で織られた昔ながらの紬が映える。

手に携えた昔の農耕具やクバ笠が踊りに合わせて煌めき、

掛け声や歌とともに踊りの隊列を彩っている。




f0236145_842463.jpg




f0236145_8424888.jpg




f0236145_8504411.jpg




踊られる演目はどれも、

この島に伝わる昔ながらの農耕に由来したものだ。

華やかな舞いの中には種子撒きや刈取りなど、

農作業の様子の様子が巧みに描かれ、




f0236145_8442393.jpg




f0236145_8445919.jpg




その動作ひとつひとつに、決して豊かでなくとも慎ましく暮らし、

五穀豊穣を願い日々の糧に感謝して生きてきた島の人々の、

ありのままの姿が表されている。




f0236145_8403469.jpg




f0236145_8403571.jpg




かつて母が踊り祖母が踊り、

そのまた祖母も同じように踊ってきた「働き者の女」の踊り。

時にユーモラスで、時に勇ましく、

取り巻く人々も互いに歌声を上げ踊りはたゆみなく続いてゆく。




f0236145_8455528.jpg




f0236145_846090.jpg




踏みならす足音は大地を讃え、

振り煽る手は天に微笑む。




f0236145_8455114.jpg




f0236145_8404212.jpg




女たちが舞い跳ねる踊りの列は、

遥かな時を超えて八重山の今と昔を紡ぎ合わせてゆく

静かな祈りのように続いていった。




f0236145_8374224.jpg


More…
[PR]
# by amboina | 2011-01-25 09:25 | 八重山

武神たちの舞

f0236145_13434738.jpg




荘厳な法螺貝の音が広場に轟き、

色とりどりの衣装を身に纏った男たちが緑の大地を蹴って走り出す。

銅鑼が打ち鳴らされ、連なる影が芝生の表面を流れてゆく。




f0236145_13483318.jpg




やがて一撃の気合いが炸裂する「棒」の演目が会場を圧した。




f0236145_1347815.jpg




鋭い眼差しが相手を見据え、

間合いをはかり対峙する武者たちのシルエットが

幾重にも陽射しの中で揺らめいている。




f0236145_14575992.jpg




f0236145_1351252.jpg




やがて乾いた打音が広場に響き渡った。

剣と剣、棒と棒が激しく打ち合わされ、

雄叫びと共に唸りをあげる薙刀が疾風のごとく足下を払う。




f0236145_1482566.jpg




気迫を込めて振るう剣と繰り出す棒。

吹き出す汗が伝う武者化粧の下に、いつもの親しい島人達の面影はない。




f0236145_14135231.jpg




f0236145_14135592.jpg




底知れぬ力を秘めたその瞳の奥には、

剣風によって邪気を払い祭りを清める武神の魂が

静かに宿り灯っているように感じた。




f0236145_1414185.jpg


More…
[PR]
# by amboina | 2010-11-28 15:03 | 八重山

謡いの庭

f0236145_083523.jpg




いつしか昨夜からの細雨が止んでいた。

同時に島を貫く神の道の彼方から遠雷のような銅鑼の音が、

大きく小さくうねりながら近付いてくる。




f0236145_08418.jpg




間近に迫った芸能の支度に追われる人々と

詰めかけた来島者の喧噪が入り交じる御嶽の庭に

落ちた木々の影がゆっくりと濃さを増してゆく。




f0236145_083849.jpg




f0236145_0274630.jpg




やがて「道歌」を朗々と詠いながら、

神々の名代である神司を先頭に参詣を終えた行列が

木漏れ日の落ちる広場へと進み入ってきた。




f0236145_0101872.jpg




f0236145_010426.jpg




詠いは「庭歌」へと変わり、迎え踊る人々と道往きの人々。

その双方が互いに手を打ち鳴らし、声を限りに歌を合わせ、

ゆっくりと共鳴しながら大きな螺旋を描き練歩いてゆく。




f0236145_0111346.jpg




f0236145_0342873.jpg




f0236145_0112814.jpg




若者も老人も、男も女もその螺旋の中でひとつに混ざり合う。

その顔々には無事今日の祭りを迎えた晴れ晴れとした喜びと、

年に一度の日に向き合う静かな緊張がみなぎっている。




f0236145_0193217.jpg




ひときわ高い銅鑼の音を合図に人々の螺旋は解け、

男衆と女衆が向きあう二つの壁となって広がり向き合った。




f0236145_0114410.jpg




f0236145_0594058.jpg




緑の庭の中央、人々はそれぞれに天高く両手を宙に舞わせ、

寄せては返す波のように大祭の始まりを祝い踊る。




f0236145_0143071.jpg




f0236145_0141431.jpg




歌声は雲を払い天へと駆け上り、

輝きを増しはじめた青空の隅々を埋め尽くし

何処までも高く広がっていった。




f0236145_0114269.jpg


More…
[PR]
# by amboina | 2010-11-12 01:02 | 八重山

夜の鼓動

f0236145_1552292.jpg




夜のしじまを縫うように細かな雨が舞っている。

夕刻から広がりはじめた分厚い雲が、

空から月と星の気配を覆い隠していた。




f0236145_1553112.jpg




更けきった夜の集落に、いつもは響いてくる楽の音はない。

かわりにさざめく人々の足音が砂道を慌ただしく通り過ぎてゆく。




f0236145_1554515.jpg




f0236145_1632687.jpg




種子取祭本番を明日に控えた己丑の日の宵。

島の定められた各々の場所では仕込みと呼ばれる

奉納芸能の最終リハーサルが静かに始まろうとしていた。




f0236145_15543917.jpg




f0236145_1555529.jpg




雨戸や襖などの仕切りを取り外された一軒の古民家。

煌煌と照らす明かりの下に衣を正した島人達の姿が浮ぶ。

居並ぶ村の長老や主事が取り巻くその座敷の中央では、

畳を踏みならし声を張り上げる人影が勇壮な口説や狂言を舞い踊っている。




f0236145_1555713.jpg




f0236145_15551117.jpg




決して長くはない時間、演者は長い時間積み重ねてきた修練の粋を披露し、

長老達はそのひとつひとつを吟味し、細かな感想を付け加えてゆく。




f0236145_1555126.jpg




f0236145_15595589.jpg




庭には落ち着きなく出番を待つ者、

仕込みを終えて安堵の一息をつく者、

互いの出来を批評し合い、

明日の不安を払うように次の仕込みに見入る者。




f0236145_155424.jpg




f0236145_1614952.jpg




そこに毎夜の練習で見かける笑顔や和やかさは微塵もない。

ただ言い知れぬ高揚感と緊張感だけが静かに座を満たしていた。




f0236145_16152348.jpg




f0236145_1671883.jpg




艶やかに舞踊を舞う女性達の謡が、彼方の夜闇を抜けて響いてくる。

明日を呼ぶような、朗々としたその調べが消えてゆく空の向こう、

見上げた頬を濡らす細雨の先、手を伸ばせば届くほど間近に

まぎれもない祭りの足音は迫ってきていた。




f0236145_16234512.jpg


More…
[PR]
# by amboina | 2010-11-06 16:49