Amboyna's Color

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楽園の果てを往く

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国道58号線を北へと走る。

夏の名残りを含んだ熱い大気が水平線までを埋め尽くし、

その最果てを沸き上がる夏雲が縁取っていた。




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開け放った窓から吹き込む風は静かだった。

遥か彼方へと続いてゆく灯色のセンターラインの先には、

潮騒と競り合う濃い緑の香りだけが満ちている。




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北端の岬をめざそうという考えに、特に深い理由はなかった。

ただ普段は何事にも深い執着を持てない私のような人間が

何故か惹かれてやまないこの南の楽園の、

その最果てという場所を見てみたかっただけだ。




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幾つかの橋を越え、幾つもの隧道をくぐり、

そうして辿り着いた北端の岬は、

圧倒的な大海に迫り出した険しい岩肌と、

噎せ返るような原初の自然が織りなす

まさに大地の尽きる場所だった。




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紺碧の海はどこまでも蒼く深く澄み渡っている。

眼下の珊瑚礁を洗う波音が幾重もの唸りをこだまさせ、

強い陽射しが岩縁の下生えを焼いていた。




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岬の上を吹き渡ってゆく音のない強い風に晒されながら、

目の前に広がる雄大で容赦のない世界を見渡した。




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しかし心の片隅で密かに期待していた、

この南の世界に自分を惹きつける

なにか特別な「理由」のようなもののカタチを、

そこに見つけることはできなかった。




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by amboina | 2011-03-26 11:53 | 南方行脚

潮騒の街

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海へと緩い傾斜が続く細い街路を歩いた。

緑に縁取られた鉛色の集落が往く手を幾重にも辻折れてゆく。




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早い夕陽に暮れなずむ、そんな箱庭のような小さな空間の先へ、

踏み込んでは迷い、ただ目的もなく歩き続ける時、

視線はファインダーを外れて、虚の彼方を彷徨いはじめる。




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国道からほんのわずかに道をそれた海辺の集落の

鬱蒼としたフクギ並木に埋もれるその細々とした道行きには人影もなく、

行き着く先をどうにも見定まらせない不思議な迷路感に溢れて、

迷子を楽しむ私の五感をゆっくりと麻痺させていった。




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うねる苔むしたブロック塀が赤瓦の家屋を囲う世界で、

砂岩舗装の街路の真ん中に走る排水路だけが

まるで何処かへ誘く道標のように果てしなく続いてゆく。




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高い夏空に逆らうような冷たい風が足下を薙ぎ去っていった。

フクギ並木のざわめきと、その冷たい風に誘われて歩みを東に進めると、

道果てに四角く切り取られた空と海がぽっかりと口をあけている。




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集落の尽きる海辺には高い護岸で守られた小さな浜が広がっていた。

背後に広がる集落と似通った人影のない静かな浜だ。

低い陽射しに照らされ砂浜を這うグンバイヒルガオを伝い、

微かな潮騒と濃い海の香りが立ち昇ってくる。




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彼方の水平線には伊平屋島と伊是名島の島影が微かに浮かび、

南の岬の影には伊江島の尖った稜線が早い夕陽に照らされ輝いている。




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宿へと戻る道すがら振り返ると、

さっきまで私の立っていた海辺を眺めながら

日暮れのおしゃべりをいつまでも楽しむおばぁ達のシルエットが、

遠い空を背景にぽつりと浮かび上がっていた。




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by amboina | 2011-03-09 17:31 | 南方行脚

強者達の夢の跡

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輝く陽差しを薙ぐように、

冷たい風が吹きすぎていった。




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遠く紺碧の大海を望む城壁を越え、

古木の幹をなめ、背後の深い森の彼方へ

風は絶えることなく吹き寄せ続ける。




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崩れかけた石積みに腰掛けた私の前には、

遠い昔に滅んだ王国の記憶が横たわっている。




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険しい山間の地形に合わせて、

優美な曲線を描く琉球石灰岩の城壁のうねり。

針穴のように穿たれた門と門をつなぐ石畳の郭路。




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かつて此処には強大な王たちが君臨し、

飽くなき栄華と覇権を他国と競っていたという。

見下ろす土地は豊かで、港には貿易船が連なり、

聳え立つ楼閣には多くの麗人が集い賑わっていたことだろう。




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しかし今は冷たい風だけが

静かに虚空の底へと吹き寄せている。




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城跡の隙間を抜ける風音に心を澄ますと、

砕け朽ちかけた石積みの一つ一つが記憶する

遥かな昔の猛者たちの猛々しい雄叫びが、

幻のように浮かび上がってはゆっくりと消えていった。




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by amboina | 2011-02-27 02:18 | 南方行脚

うりずんの島へ

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沖縄にいます。

雨を狙った今年初めての南方行脚は

狙いもむなしくとても良い天気に恵まれてしまいました。




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さすがに夜は肌寒いですが、

そこは南国、日中はTシャツ一枚でも汗ばむほどの陽気。

空は初夏の色、海はすでに真夏の色合いを帯びて光り輝いています。




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内地から着込んできた皮ジャンをレンタカーのトランクに放り込み、

恥ずかしくなるほど色の落ちた腕を窓から晒して島内を走ると、




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不思議なものです、自分の中の歪なチャンネルが

大きな音をたててガチャリと切り替わりました。




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単純ですが、しばらく手こずっていた

なんだかわからないワダカマリや、得体の知れないタテマエが

ゆっくりと自分の中の優先順位からこぼれ落ちてゆくのを感じます。




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得体の知れない他国の軍用機が舞い飛び、

素朴で都会のような洗練さとは無縁の島。




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しかしここには私が一番好きな匂いが満ちています。

そしてなによりも大きく仰ぎ見上げることができる空が広がっています。




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夕陽が迫る道の彼方に、

まだ生まれていない新鮮な出会いと、かけがえのない思い出の卵が

笑顔で待っていてくれることを祈って




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今年もカメラ片手の旅が始まります。




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by amboina | 2011-02-26 03:03

幻の馬

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それは突如として始まった。

鮮やかな紫の頭巾に白装束、袖をまとめた赤い襷。

腹には馬頭を括り付けた珍妙な出立ちの男たちが

賑やかな音楽と共に軽快に踊り舞っている。




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腹の馬頭に結んだ手綱を雄々しく掲げ、

馬に跨がった武士の姿を模して時に激しく、進んでは退き、

威声をあげては宙を舞う数十人の男たちの影。




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彼らが御する幻の馬の口がいなないた。

見えない後脚を蹴り上げ、

在るはずのない鬣が島の風に揺れる。




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男たちはその荒馬を自在に乗りこなし大地を跳ね、

雄々しい掛け声と共に意気揚々と喝采の中を進む。

嵐を押しのけ、陽射しを呼び込んだ庭の芸能が

やがて幕を下ろそうとしていた。




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その最後の瞬間を見守る天に祈りを返すように、

男衆の足はひときわ高く上がり

幻の馬とともに軽々と宙に舞い上がった。




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by amboina | 2011-02-07 18:25

静かなる足音

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一声、涼しげな少年の声が走り抜けていった。

ちりん、ちりん、ちりん

その声を追うように、やがて軽やかな鈴鐘の音が御嶽の庭に響き渡る。




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一足一足、歩みを刻みながら

賑やかな芸能に湧いた緑の広場へ、静々と羽織袴姿の男たちの姿が進み出た。

短い掛け声と突如鳴り響く鋭い太鼓の音に、

ざわめく会場はしばしの静寂に沈み込む。




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大人達は威風堂々と、

白い鉢巻をきりりと締めた子供達も凛々しく太鼓を掲げ、

しっかり前を見据えている。




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単調に、しかしはっきりと

邪を払うかのような十七個の太鼓は鳴り響き、

幾度も共鳴しては静寂の隙間に呑み込まれ消えてゆく。




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やがて僅かな太鼓の残滓と

大小の足音だけを芝生の上に残し

男たちの隊列は夢のように通り過ぎていった。




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降り注ぐ10月の陽光の下

御嶽の木陰からレンズを通して見つめる私の目に、

彼らの赤い襷は痛いほど眩しかった。




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by amboina | 2011-02-01 10:37 | 八重山

天と大地に吹く風

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晴れやかで高らかな声が跳ねる。

笑顔を輝かせた女性達が軽やかに緑の広場へと歩み出し、

芝を踏む沢山の足音が楽の音と重なり合った。




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八重山上布で織られた昔ながらの紬が映える。

手に携えた昔の農耕具やクバ笠が踊りに合わせて煌めき、

掛け声や歌とともに踊りの隊列を彩っている。




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踊られる演目はどれも、

この島に伝わる昔ながらの農耕に由来したものだ。

華やかな舞いの中には種子撒きや刈取りなど、

農作業の様子の様子が巧みに描かれ、




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その動作ひとつひとつに、決して豊かでなくとも慎ましく暮らし、

五穀豊穣を願い日々の糧に感謝して生きてきた島の人々の、

ありのままの姿が表されている。




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かつて母が踊り祖母が踊り、

そのまた祖母も同じように踊ってきた「働き者の女」の踊り。

時にユーモラスで、時に勇ましく、

取り巻く人々も互いに歌声を上げ踊りはたゆみなく続いてゆく。




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踏みならす足音は大地を讃え、

振り煽る手は天に微笑む。




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女たちが舞い跳ねる踊りの列は、

遥かな時を超えて八重山の今と昔を紡ぎ合わせてゆく

静かな祈りのように続いていった。




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by amboina | 2011-01-25 09:25 | 八重山

武神たちの舞

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荘厳な法螺貝の音が広場に轟き、

色とりどりの衣装を身に纏った男たちが緑の大地を蹴って走り出す。

銅鑼が打ち鳴らされ、連なる影が芝生の表面を流れてゆく。




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やがて一撃の気合いが炸裂する「棒」の演目が会場を圧した。




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鋭い眼差しが相手を見据え、

間合いをはかり対峙する武者たちのシルエットが

幾重にも陽射しの中で揺らめいている。




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やがて乾いた打音が広場に響き渡った。

剣と剣、棒と棒が激しく打ち合わされ、

雄叫びと共に唸りをあげる薙刀が疾風のごとく足下を払う。




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気迫を込めて振るう剣と繰り出す棒。

吹き出す汗が伝う武者化粧の下に、いつもの親しい島人達の面影はない。




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底知れぬ力を秘めたその瞳の奥には、

剣風によって邪気を払い祭りを清める武神の魂が

静かに宿り灯っているように感じた。




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by amboina | 2010-11-28 15:03 | 八重山

謡いの庭

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いつしか昨夜からの細雨が止んでいた。

同時に島を貫く神の道の彼方から遠雷のような銅鑼の音が、

大きく小さくうねりながら近付いてくる。




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間近に迫った芸能の支度に追われる人々と

詰めかけた来島者の喧噪が入り交じる御嶽の庭に

落ちた木々の影がゆっくりと濃さを増してゆく。




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やがて「道歌」を朗々と詠いながら、

神々の名代である神司を先頭に参詣を終えた行列が

木漏れ日の落ちる広場へと進み入ってきた。




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詠いは「庭歌」へと変わり、迎え踊る人々と道往きの人々。

その双方が互いに手を打ち鳴らし、声を限りに歌を合わせ、

ゆっくりと共鳴しながら大きな螺旋を描き練歩いてゆく。




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若者も老人も、男も女もその螺旋の中でひとつに混ざり合う。

その顔々には無事今日の祭りを迎えた晴れ晴れとした喜びと、

年に一度の日に向き合う静かな緊張がみなぎっている。




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ひときわ高い銅鑼の音を合図に人々の螺旋は解け、

男衆と女衆が向きあう二つの壁となって広がり向き合った。




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緑の庭の中央、人々はそれぞれに天高く両手を宙に舞わせ、

寄せては返す波のように大祭の始まりを祝い踊る。




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歌声は雲を払い天へと駆け上り、

輝きを増しはじめた青空の隅々を埋め尽くし

何処までも高く広がっていった。




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by amboina | 2010-11-12 01:02 | 八重山

夜の鼓動

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夜のしじまを縫うように細かな雨が舞っている。

夕刻から広がりはじめた分厚い雲が、

空から月と星の気配を覆い隠していた。




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更けきった夜の集落に、いつもは響いてくる楽の音はない。

かわりにさざめく人々の足音が砂道を慌ただしく通り過ぎてゆく。




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種子取祭本番を明日に控えた己丑の日の宵。

島の定められた各々の場所では仕込みと呼ばれる

奉納芸能の最終リハーサルが静かに始まろうとしていた。




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雨戸や襖などの仕切りを取り外された一軒の古民家。

煌煌と照らす明かりの下に衣を正した島人達の姿が浮ぶ。

居並ぶ村の長老や主事が取り巻くその座敷の中央では、

畳を踏みならし声を張り上げる人影が勇壮な口説や狂言を舞い踊っている。




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決して長くはない時間、演者は長い時間積み重ねてきた修練の粋を披露し、

長老達はそのひとつひとつを吟味し、細かな感想を付け加えてゆく。




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庭には落ち着きなく出番を待つ者、

仕込みを終えて安堵の一息をつく者、

互いの出来を批評し合い、

明日の不安を払うように次の仕込みに見入る者。




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そこに毎夜の練習で見かける笑顔や和やかさは微塵もない。

ただ言い知れぬ高揚感と緊張感だけが静かに座を満たしていた。




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艶やかに舞踊を舞う女性達の謡が、彼方の夜闇を抜けて響いてくる。

明日を呼ぶような、朗々としたその調べが消えてゆく空の向こう、

見上げた頬を濡らす細雨の先、手を伸ばせば届くほど間近に

まぎれもない祭りの足音は迫ってきていた。




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by amboina | 2010-11-06 16:49