Amboyna's Color

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海を駆ける矢

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八重山の島々へ向かう交通手段は限られている。

というよりかなり特殊なケースを除いては一種類しかない。

定期便とチャーター便を含めた高速船である。




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八重山諸島の主島である石垣島には、

各離島を結ぶ高速船を運行させている海運や観光会社が数社あり、

日々競い合うように島々へ船を送り出している。




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それぞれ40ノット以上は楽に出せる流線型の船ばかりだ。

凪の日は穏やかな海面を風が滑るように疾走し、

波が高ければ船首を海面から高く突き出し、

強烈な波しぶきを上げて波頭を跳ね飛び渡っていく。




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さらに梅雨が明け、いざ真夏の観光シーズンともなると、

観光客を詰め込んだ船達が水平線に白い航跡を曳きながら絶えず行き交い、

さながら離島航路は渋滞した海の高速道路へと変貌する。




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正直に言って船はあまり得意な方ではないのだが、

ここ八重山の海を疾駆する高速船に限っては、乗るのが全く苦にならない。

もちろん嫌だと言い張ってもほかに手段がないのだから仕方がないのだが、

むしろ待望の島が少しずつ近付いてくるの眺めながら、

激しいエンジンの振動に揺さぶられている時間は胸躍る時間でもある。




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主島から私の通いつめる島までは船で15分とかからない。

その時間は、故郷というものをあまり意識しないで育った私にとって、

夏休みの帰省にはしゃぐ子供が抱くようなワクワクとした高揚感を

つかの間、味あわせてくれる貴重な時間なのだ。




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by amboina | 2010-05-26 02:01 | 八重山

深 淵

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南国の日差しの下で、青い海と白い砂浜が広がり

年間数十万人という観光客が訪れるこの島にも、

踏み込むことを躊躇わせる場所がある。




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そのひとつが島の重要な祭事や祈願が行われる

「御嶽」という聖なる場所だ。

神司と呼ばれる神から選ばれた特別な女性が代々守り、

祖先や御嶽に祀られた神と交信する拝所である。




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島の人々は日々の生活や節目の年などにこの御嶽を訪れ、

供物を献上し祈りを捧げ、神司を介して神と会話する。

何百年もの間、そうして幾万の願いを常世に送り届けてきた場所だ。

当然、観光客や物見遊山の輩が気安く立ち入ってよい場所ではない。

少なくとも、私は立ち入ろうという勇気がわかなかった。




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御嶽の入り口には鳥居が立てられており、

そこから珊瑚砂を敷いた道が深い森の奥の拝所へと伸びている。

はじめてその鳥居の前に立った時、空気が違うと思った。

ざわざわと草木の揺れる音やカラスの鳴き声はするのだ。

しかし入り口から数歩先、手を伸ばせ届くような距離に

見えない静寂の壁のようなものが確かにある。




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結界とも言うべきその壁が、外界と聖域とをくっきり分けていた。

これを押し分けて先に進もうなどとは、とても考えられなかった。

後に神司の手伝いで、特別に中へと入らせてもらった時も、

やはり私のような不信心者を堅く寄せ付けない、

底知れぬ空気がその場に満ちていた。




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この島と、この島の人々にとって、

神の住む深淵とはすぐ傍らにあるものなのだ。




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by amboina | 2010-05-24 11:20 | 八重山

宮古島の残像

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馬鹿の一つ覚えのように八重山へ通いつめていた私にとって、

宮古島とは羽田行きの直行便が給油に訪れる中継地であり、

三年前に台風で足止めされたという苦い思い出が残る島でしかなかった。




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島に標高のある山がないせいだろうか。

曇天の中、着陸態勢に入った飛行機の窓から見下ろすその姿は

まだらな田畑の格子模様が見渡す限りに広がって、

どこか淋しく赤茶けて見える。




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しかしその印象は瞬く間に、予想せぬ驚きへと覆されることとなった。

北部に向かう道を下るにつれ、天を切り裂くようにゆっくりと曇はほつれはじめ、

世渡崎からまっすぐに伸びた池間大橋を渡る頃には、

眩い夏至の太陽があざ笑うかのように照りつけていた。




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橋を渡る車の両脇を瑠璃色の海が飛ぶように過ぎてゆく。

誰もいない港の片端では、忘れられた陰がじっと息を潜めている。

巨大な砂丘の彼方にはひっそりとしたビーチが静かな波音を響かせ、

断崖の岬にそそり立つ灯台が、荒々しく天に拳を突き立てていた。




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それは初めて目にする圧倒的な宮古島の姿だった。

そしてその絶景は、三年前に歪んでしまったこの島の印象を、

呆れるほど短時間に記憶の底から剥ぎ取ってしまった。




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もはや帰路の中継地としての物憂い、赤茶けたイメージは心の中に浮かんでこない。

新たに記憶へ残ったのは、沖縄本島にも八重山の離島にも負けない、

荒々しく透き通ったいくつもの残像だ。




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その残像が水平線にうねり上がった積乱雲と重なって見えたとき、

今まで知らずにいたこの島の本当の魅力が、

焼けた肌を透かして、ゆっくりと染み込んで来るように感じた。




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by amboina | 2010-05-22 04:18 | 南方行脚

蒼の輪郭

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古より青色は様々な言葉で呼び表されてきた。

紺色、藍色、群青色、縹、碧、アズライト、ウルトラマリン…

そうした呼び名の中でも、私は「蒼」という言葉にひどく惹かれる。




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なにか突き抜けたような輪郭を持つその文字が、

沖縄で目にする様々な青色を表現するのに、

なんとなくしっくりと当て嵌まる気がするのだ。




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かつて八重山に、「ザン」と呼ばれる人魚がたくさん住んでいたという。

彼らは水中と水面の境、抜けるような蒼い世界で生きていた。

人間がこの海にやって来るよりもずっと前から、

沖縄がまだ大陸の一部だった頃から、彼らはこの世界の住人だった。




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彼らが見ていた蒼色とは、いったいどんな蒼だったのだろう。

それは例えば琉球ガラスの玉や、染め布のように輝いていたのだろうか。

その色は月夜のように深く、あけもどろのように清らかに澄んでいただろうか。




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蒼は死者の色であり、忌禁の色でもある。

同時にこの世ならぬ神秘に心を誘う色でもある。

いつしか彼らはその蒼の中に融けて、消えてしまった。




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もしかしたら「蒼」という色は、

人間のために用意された色ではないのかもしれない。




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by amboina | 2010-05-18 02:56 | 八重山

星が呟く夜

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夜になり、月のない島の空は壮麗な星の世界になる。

初めてこの島を訪れたとき、最後の晩にひとり星を眺めにいった。

夜の匂いが満ちる漆黒の闇の中、足が向くに任せて歩いた集落の外れ、

村に災いが入ることを防ぐ石積みの先端に腰を下ろし、

ぼんやりと夜空を見上げる。




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街灯に眩んだ目が闇に慣れるにつれて

初めて見るその偉容は浮かび上がってきた。

八重山では天の川のことを「天じゃら」もしくは「ティンガーラ」と呼ぶ。

天に散る星粒という意味だが、見上げた視界いっぱいに広がるその姿は、

まさに言葉を奪い思考も奪うような星粒の大河だった。




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思えばこんなに見事な天の川など、今までに見た記憶がない。

視野の端から端まで、大きく弧を描いて広がる星の流れは

まさに天文雑誌で見かける銀河系そのものだ。

それは美しさを超えて、恐ろしいほどの迫力だった。




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手前の星と、その奥に広がる銀河の肢。

その全てが大気の揺らぎに合わせて一斉に瞬いていた。

知覚力を超えた壮大な遠近感に目眩がしてくる。




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遠くで牛が鳴いている。

森で呼び交すコノハズクの声も聞こえる。

何よりも夜が身悶えているような夏虫たちの大合唱に合わせて、

天空の星々が静かに呟きあっていた。




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暗がりから足下にすり寄ってきた猫達を撫でながら、

明日には戻っていく星も瞬かない地元の夜空を考えた。

空にではなく地上に偽りの星が瞬くせわしない大都会の姿を。

なぜだかその姿が、

天の星達よりもずっと遠くにあるように思えてならなかった。




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by amboina | 2010-05-17 02:40 | 八重山

蝶を追う人

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年に一度か二度、島で顔を合わせる人がいる。

もの静かで立ち振る舞いも穏やかなその人は、蝶の収集家だった。

聞けば季節ごとに休みを見つけては全国を廻り、

大好きな蝶々を追い求めているのだいう。




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初めて会ったとき、彼はこの島には観光で来たのだと言った。

すぐ隣のずっと大きな主島での採集を終え、

たまにはのんびり観光でもしてみようかと、急遽この島に立ち寄ったらしい。




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「この島にも蝶はいっぱいいますが採らないんですか」

と私が聞くと、彼はさほど興味もないように首を振り、

「あまり期待してないねぇ」と苦笑いを浮かべた。




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そこで私は、南の浜に向かう道には蝶がたくさん群れていて、

そこを歩くと飛び立った蝶が後ろで渦を巻くのだ、と話してみた。

「とても綺麗でしたよ」

「ほう、なら一度行ってみようかな」

さほど気を引かれたふうでもなかったが、

優しい彼は私を気遣うようにそう言って、ふらりと出かけていった。




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そのまま、夕食時になるまで彼は帰ってこなかった。

その翌日は、朝早くから採集道具を整え、完全装備で出かけていった。

「これじゃあ、観光にならないよ」

たくさんの獲物を抱えて、午後遅くに戻ってきた彼の顔は

そう言いながらも幸せそうな笑みで溢れていた。




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今年も彼からの便りが届く。

取り扱い注意と大きく書かれた小包とともに。

その中にはピンで留められた色とりどりの島の蝶と、

やさしい彼の笑顔が詰まっているはずだった。




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by amboina | 2010-05-15 04:11 | 八重山

緑の回廊

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長めのスコールが続いた梅雨が明け、

水分をたっぷり補給した緑が濃く繁る頃になると、

島のあちこちに幻のような緑のトンネルが現れる。




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道を挟んだ大木同士が互いに緑の葉をのばし合い、

繋がって絡み合い、さらに重なり合ってアーチを形作り、

地面にこれ以上ないほどの陰を落とす。




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こうして出来上がった幾つかのトンネルが、

南の島の強烈なコントラストの中に涼しい気配を生み、

つかの間、散策する人々の姿を飲み込んではそっと送り出してゆく。




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緑と陰のトンネルの向こうには、

夏雲を抱いた赤瓦の集落や鮮やかな紺碧の海、

生命の息吹に輝く自然が顔を覗かせている。




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そんな真夏の世界を前にしながら、

なかなか木陰から前へ進めない私を追い抜いて、

わずかに日陰で冷やされた風が

心地よく吹き抜けていった。




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by amboina | 2010-05-14 02:56 | 八重山

マヤー小の世界

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動物の中で猫が特別に好きなわけではない。

ただ気が合う生き物だな、と思っている。

相手がどう感じているかは知らないが、ただ何となくそう思う。




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これまでの人生、動物とともに暮らした時間は長い。

愛犬とは15年過ごしたし、亡母が拾ってきた猫とも8年を過ごした。

我が家のベランダには、今でも亡き飼い猫と仲の良かった野良猫達が

近所付き合いでもしているかのように訪れる。




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私は彼らに餌を与えたりはしないし、彼らもねだったりしない。

むやみに触らないし触らせてもくれない。

ただお互い、午後のひとときをのんびり近くで過ごすだけだ。




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島のマヤー小たちともそんな感じで付き合っている。

確かに地元の猫達より人間に寛容で慣れてはいるが、

基本的に距離感は変わらないつもりだ。




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しかし、どうしても彼らに近付きたくなる時もある。

それまで長閑に欠伸をしていた表情が急に引き締まり、

とりたてて何もない方向を鋭く凝視する瞬間だ。

ヒゲをびんと立て、耳だけはこちら向けてじっと動かない。

そんな最優先モードが切り替わったときの彼らの姿を見ると

ついいつもの距離感を破ってしまいたくなる。




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「何を見つめて、何を探っているのだろう」

きっと何かの気配や小さな音に反応しただけだ。

だが、その場に膝をつき、両手をついて

猫と同じ高さでその視線の先を追ってみたい

という誘惑に逆らえない。




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眺めてみたところで、

何も発見できはしないことは分かっている。

一緒の空間を共有していても、

猫と人間は別々の次元に生きているのであって

見ている世界は全く違うのだから。




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by amboina | 2010-05-12 03:24 | 八重山

軽トラの似合う島

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沖縄の離島はどこでもそうかもしれないが、

もっとも頻繁に使用されている自動車は軽トラックだと思う。

一家に一台とは言わないまでも、

それに近い数が島のあちこちを毎日走り回っている。




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荷物の運搬はもちろん、子供の送り迎えから買い物、

果ては逃げた牛を追いたてる手段として、

軽トラックは島民の足となり手となって活躍している。




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「ギアを3速に入れる前に家に着く」

面積6k㎡弱のこの島では、冗談半分にこんなことを言う人も多い。

港の駐車場や、集まりのある時の公民館前などは

さながら軽トラックの見本市のようだ。




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さらに、舗装された道より珊瑚の砂道が圧倒的に多いこの島で

軽トラは牧草地を走り、砂浜を走り、時には道なき森にも分け入っていく。

当然、その痛み方は凄まじい。

およそ考えられる全ての傷が見て取れる。



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しかしどんなにくたびれていようが、汚れていようが

この島を今日も元気に疾走する軽トラたちは、

フェラーリよりも素敵でポルシェより魅力的に見えるから不思議だ。




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by amboina | 2010-05-11 14:27 | 八重山

夢の樹

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島でよく見かける鳥に鷺(サギ)がいる。

真っ白な体をした体長50センチほどの野鳥だ。

海辺の波打ち際では抜け目なく小魚を狙い、

牧草地では飼育牛の背に停まって、飛び交う虫を狙っている。




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ある時、写真好きな島人が興味深い話をしてくれた。

この島の鷺達は夜になると、ある決まった場所に集まり朝を待つらしい。

牧草地の茂みや、海辺の林などにいくつかの寝床をもっているという。

だが、彼がある日みつけたというその場所は、

なんとも私の想像力をかきたてる不思議な場所だった。




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今は森の奥に埋もれる、遥か昔に捨てられた集落跡に

一本の巨大な老木が立っている。

夕暮れになると、鷺達はその老木をめざして群集まり、一晩羽根を休めるというのだ。

その光景は、まるで巨木に真っ白な実が実り繁っているようで壮観だという。




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そして面白い事に、この木は時々姿を隠すらしい。

場所も道も分かっているし、たくさんの鳴き声もするのに

いざ見に行くとどうしても見つけられない時がある。

夕暮れ時であたりは暗いし、滅多に人も踏み込まない場所だから

そうしたこともあり得なくはない。

それでも、なんとも不思議な話だと思った。




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あの木は神様が護っているのかもしれない。

だから鷺も安心して集まってくるのだ。

私にこの話をしてくれた島人はそう言って笑った。

いつでも見て良いものではないんだと。



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夜、集落の外れの深い森を眺めて思う。

満月の明かりの下、ひしめき合う純白の白鷺達を

奇妙な果実のように実らせた老木の姿を。




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私もいつの日か、夢のようなその木を見ることができるだろうか。

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by amboina | 2010-05-10 14:01 | 八重山