Amboyna's Color

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楽園の果てを往く

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国道58号線を北へと走る。

夏の名残りを含んだ熱い大気が水平線までを埋め尽くし、

その最果てを沸き上がる夏雲が縁取っていた。




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開け放った窓から吹き込む風は静かだった。

遥か彼方へと続いてゆく灯色のセンターラインの先には、

潮騒と競り合う濃い緑の香りだけが満ちている。




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北端の岬をめざそうという考えに、特に深い理由はなかった。

ただ普段は何事にも深い執着を持てない私のような人間が

何故か惹かれてやまないこの南の楽園の、

その最果てという場所を見てみたかっただけだ。




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幾つかの橋を越え、幾つもの隧道をくぐり、

そうして辿り着いた北端の岬は、

圧倒的な大海に迫り出した険しい岩肌と、

噎せ返るような原初の自然が織りなす

まさに大地の尽きる場所だった。




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紺碧の海はどこまでも蒼く深く澄み渡っている。

眼下の珊瑚礁を洗う波音が幾重もの唸りをこだまさせ、

強い陽射しが岩縁の下生えを焼いていた。




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岬の上を吹き渡ってゆく音のない強い風に晒されながら、

目の前に広がる雄大で容赦のない世界を見渡した。




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しかし心の片隅で密かに期待していた、

この南の世界に自分を惹きつける

なにか特別な「理由」のようなもののカタチを、

そこに見つけることはできなかった。




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by amboina | 2011-03-26 11:53 | 南方行脚

嵐の夜

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空港が閉鎖され飛行機の発着が停まり

離島へ向かう最後の高速船も欠航すると、

台風を待つ島は完全に孤立した。




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そうなると島に残った者がしなければいけないことは限られてくる。

風に飛ばされそうなものは片っ端から縛り付け、

雨戸を締め切った家の中に閉じこもって

亀のようにじっと嵐が過ぎるのを待つ準備を整えるのだ。




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昼を過ぎ、大粒の雨が降ってきた。

本格的な風とともに断続的に激しく屋根と雨戸をたたき続ける。

やがて雷鳴とも地鳴りともつかない轟音が島を包み込んだ。

今年最大規模に発達した台風の中心は

まぎれもなく、この八重山諸島の間近まで迫っているらしい。




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夜更け前、苦労して固く閉じた雨戸をこじ開け

不適な笑みをたたえた島人が顔を覗かせた。

今や雨風の地獄と化した外の様子をまるで気にするでもなく、

手に持った重そうな網をぐいと差し出す。

「風裏の浜でスル(キビナゴ)を穫ってきたから、食べろ」

何食わぬ顔でそう言い放ち

来たときと同じく唐突に嵐の中を去っていった。




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巨大な手が島をつかみ、力任せに揺さぶっているようだ。

赤瓦が軋み、遠くから木々の折れる音も聞こえてくる。

今や圧倒的な自然の力が小さな島を薙ごうとしていた。




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突如、警報を出し続けていたテレビのニュースが灯りと共にプツリと消えた。

潮が混じった海風に電柱の変圧器がやられてしまったらしい。

ロウソクとランタンを灯しただけの薄暗い屋内で、

残されたラジオの台風情報に耳を澄ませながら

風の音と蒸し暑さに堪える長い夜がこうしてはじまった。




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by amboina | 2010-06-11 01:03 | 八重山

嵐の気配

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チャンネルの少ない離島のテレビから不穏なニュースが伝わってくる。

何日も前から南海上で発達し続けていた巨大な低気圧が、

ついに今年13個目の台風へと成長したのだという。




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「今年の台風も大きくなるかもしれん」

そう不安気に話す宿の老夫婦の声を背に聞きながら、カメラを手に外へ出た。

今朝まで同宿していた観光客たちは、ほとんどが予定を繰り上げ

もっと大きい近くの主島へと避難していった。

宿に残ったのは覚悟を決めた私と、もう一人の常連客の二人だけである。




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薄闇の空を鉛色の雲塊が飛ぶように過ぎていく。

南からの風は、まだ穏やかながら粘り着くような湿気を含んでいた。

集落の中を歩く人影はほとんどない。




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ふいに強い風が吹いて、道端の芭蕉が大きく揺れた。

こんな風が、これから少しずつ間隔を狭めながら吹き続けるだろう。

そしてこの小さな島の何もかもを薙ぎ払い拭い去るまで吹き続けるのだ。




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不穏な静けさに包まれた集落を抜けて外周道路に出ると、

浜へと続く道沿いに立つ一本の木が、阻むように私を見下ろしていた。




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その姿に気圧され、先へ行くのをあきらめ引き返すと

近づく嵐を察したのだろうか、遠くの森をめざして歩み去っていく

一匹の猫とすれ違った。




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by amboina | 2010-06-09 14:54 | 八重山

緑の回廊

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長めのスコールが続いた梅雨が明け、

水分をたっぷり補給した緑が濃く繁る頃になると、

島のあちこちに幻のような緑のトンネルが現れる。




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道を挟んだ大木同士が互いに緑の葉をのばし合い、

繋がって絡み合い、さらに重なり合ってアーチを形作り、

地面にこれ以上ないほどの陰を落とす。




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こうして出来上がった幾つかのトンネルが、

南の島の強烈なコントラストの中に涼しい気配を生み、

つかの間、散策する人々の姿を飲み込んではそっと送り出してゆく。




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緑と陰のトンネルの向こうには、

夏雲を抱いた赤瓦の集落や鮮やかな紺碧の海、

生命の息吹に輝く自然が顔を覗かせている。




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そんな真夏の世界を前にしながら、

なかなか木陰から前へ進めない私を追い抜いて、

わずかに日陰で冷やされた風が

心地よく吹き抜けていった。




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by amboina | 2010-05-14 02:56 | 八重山