威風堂々
沖縄民謡に欠かせない音色の一つに三線という楽器がある。
三線とは黒木の竿に錦蛇の皮を張った、三味線の源流にあたる弦楽器だ。
ある時、ある偶然から繋がった不思議な縁の先で
その三線(三弦)の世界を極めようとする偉大な人物と出逢った。
南海の果て与那国島に生まれ、少年時代からすでにプロとして活躍。
沖縄民謡と沖縄ポップスの黎明期には、その卓越した技量をもって世界各国を巡り
沖縄三弦の魅力と可能性を世に広めた生粋のアーティストである。
一見して厳しく難しい顔。
音楽に関しては一切の妥協を許さないプロフェッショナルな姿勢。
初めて顔を合わせた時は正直緊張して挨拶もできなかった。
その彼がひとたび三弦を奏ではじめると、
ステージ周辺の空間がにわかに振動しはじめる。
深く伸びのある歌声と、圧倒的な技量が紡ぎだす音楽世界が
瞬間的に観客を魅了し、虜にしてしまう。
そんな彼の「音」に惹かれて、私のライブ通いの日々がはじまった。
やがて会話を交わすようになり、今では親しく付き合うまでになったが、
今でも初めて演奏を聴いたときの衝撃は薄れない。
彼の歌声には、私ごとき「にわか沖縄かぶれ」には知りようもない、
深い生まれ島への思いが詰まっている。
そして彼の三線には、三弦と共に生きてきた自分自身への
揺らぎのない自信が満ち満ちているように感じる。
私が偶然にも知り合ったこの三線の神様は
その名を「長間たかを」といいます。
泣く子も黙るウチナーポップスの大御所「喜納昌吉&チャンプルーズ」の初代三線奏者であり、
自らが率いる「アヤメバンド」のリーダーとして一世を風靡した、沖縄では知る人ぞ知る伝説の人物。
伝説の…などと言うと怒られてしまいますが、とにかくすんごい人です。
しかし本当の素顔は、人との和や出逢いをなによりも大切にする
とっても優しい思いやりに溢れた人でした。
正直、この人物と巡り会えたことは私の人生にとって宝です。
皆さんも機会があれば、一度彼のステージをご覧になってください。
沖縄音楽のイメージがひっくり返ってしまうかもしれませんよ。
by amboina
| 2010-05-08 06:21
| アーティスト