Amboyna's Color

ちいさな贈り物

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穏やかな海風が吹いている。

眼前に広がる西表島を回り込むようにやってる僅かに涼しい風は、

島の浜辺を撫で、灯台をかすめて北へと走り去っていく。




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そんな風に身を晒しながら島の外れで夕陽を待っていた。

この島の夕陽は水平線に落ちる。

海の向こうに島影が折り重なる通い島では、

望んでも見ることのできない夕陽が眺められるはずだった。




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崖沿いの荒れた草地に三脚をたてていると、

近づくけたたましい排気音と、はじけるような声が私を呼んだ。

友人の運転する軽トラックだった。

その荷台では二人の少女が手を振っている。




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草薮を踏みしだき笑顔で駆け寄ってきたのは、

昼間一緒にカメラを撮りながら遊んだ島の姉妹だった。

「おっちゃん、これあげる」

年下の妹がぶっきらぼうに、形の崩れた蚊取り線香の箱を私に投げてよこした。

振ってみると中でじゃらじゃらと乾いた音がする。

面食らって箱を見つめる私を、姉妹はニコニコと眺めていた。




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「昼間遊んでくれたお礼ですって」

運転席で微笑んでいる友人の言葉にうながされ開けてみた箱の中からは、

浜で拾った小さな貝殻を有り合わせの紐で結んだだけの

かわいいブレスレットがふたつ転がり出てきた。




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やって来た時と同様にけたたましく去って行く彼女たちを見送りながら、

沈む夕陽の中でその手作りの贈り物を眺めた。

綺麗な貝殻の表面には、開け損ねた穴の痕が幾つもついている。

きっと大急ぎで作ったに違いない。

手のひらの貝殻にあの二人の笑顔が重なる。

もう夕陽を撮ることなど、どうでも良くなっていた。




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宿に戻る途中の港の端。

夕涼みをかねた釣りを楽しむ少女たちの家族を見かけた。

茜色の空の下、吹き止みつつある潮風に乗って和やかな声が響く。

さざめく波の音と黒々と浮かび上がった島影を背に

最後の陽を浴びた睦まじいシルエットが四つ、

温かな影を延ばしていた。




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鳩間島3日目 最終回。
優しい島人(少女)とド素人カメラマンのふれあい実話シリーズNo.4です。

二人からもらった素敵なブレスレットは、今も大切に持っています。
だいぶ貝殻が欠けてしまいましたが、それでも大事な宝物です。

今思えば、夕陽を撮りに行く途中に通りかかった友人の店からは、
なんとも騒々しく賑やかな音が響いておりましたっけ。
きっとブレスレットを作っていたんですね。

しかしせっかく仲良くなったこのふたりの姉妹。
残念ながら今はもう鳩間島にはおりません。
それどころか現在この島には就学児童が一人もおらず、
島唯一の小学校も閉校状態となっています(2009年10月現在)。
私がこの島を訪れた当初も、小学校の生徒は彼女たち姉妹だけでした。
兄弟以外に遊び相手がいないのは可哀想だなぁとは思いましたし、
もしかしたら島を出たふたりのご両親も同じ気持ちだったのかもしれません。
あくまで想像ですが…

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こうして旅を続けていれば、いつか再び彼女たちと会える日がやって来るかもしれません。
その時まで、ふたりが私の事を憶えていてくれればいいなと思います。
そして、あの輝くような笑顔を忘れないでいてくれたらなと、心から願います。
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by amboina | 2010-06-07 21:47 | 八重山