Amboyna's Color

嵐の気配

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チャンネルの少ない離島のテレビから不穏なニュースが伝わってくる。

何日も前から南海上で発達し続けていた巨大な低気圧が、

ついに今年13個目の台風へと成長したのだという。




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「今年の台風も大きくなるかもしれん」

そう不安気に話す宿の老夫婦の声を背に聞きながら、カメラを手に外へ出た。

今朝まで同宿していた観光客たちは、ほとんどが予定を繰り上げ

もっと大きい近くの主島へと避難していった。

宿に残ったのは覚悟を決めた私と、もう一人の常連客の二人だけである。




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薄闇の空を鉛色の雲塊が飛ぶように過ぎていく。

南からの風は、まだ穏やかながら粘り着くような湿気を含んでいた。

集落の中を歩く人影はほとんどない。




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ふいに強い風が吹いて、道端の芭蕉が大きく揺れた。

こんな風が、これから少しずつ間隔を狭めながら吹き続けるだろう。

そしてこの小さな島の何もかもを薙ぎ払い拭い去るまで吹き続けるのだ。




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不穏な静けさに包まれた集落を抜けて外周道路に出ると、

浜へと続く道沿いに立つ一本の木が、阻むように私を見下ろしていた。




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その姿に気圧され、先へ行くのをあきらめ引き返すと

近づく嵐を察したのだろうか、遠くの森をめざして歩み去っていく

一匹の猫とすれ違った。




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しばらく青い空や海、絶景の夕陽の話が続いたので、
ちょっと趣向を変えて、晴れてもいなければ穏やかでもない、
ついでにあまり有り難くもない離島での体験を紹介してみたいと思います。

常夏の楽園である沖縄はまさしく日本の南の端っこ。
私の通う八重山は、その沖縄本島からさらに南に下ること約1000kmの彼方。
先島諸島の一部に点々と浮かんでいる離島群です。
ということはつまり、日本で真っ先に台風とご対面する最悪の場所にあります。

7月初旬から10月後半にかけての台風シーズンには、
フィリピン沖で発生した台風が、まぁ見事なぐらいのカーブを描いて
毎週のように八重山に押し寄せてきます。

このときは、「島の台風は凄いぞ。一度見ておいた方がいい」
なぞという島人の甘言に乗せられ、物見遊山のような気持ちで島に残りましたが、
初めて体験した最勢力時の台風の威力は、そんな観光気分を見事に打ち砕く
それはそれはもの凄まじく半端ないものでした。

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次回はそんな島に取り残された男が体験する、
恐怖の一夜をお送りします。
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by amboina | 2010-06-09 14:54 | 八重山