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Amboyna's Color

<   2010年 05月 ( 21 )   > この月の画像一覧

緑の回廊

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長めのスコールが続いた梅雨が明け、

水分をたっぷり補給した緑が濃く繁る頃になると、

島のあちこちに幻のような緑のトンネルが現れる。




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道を挟んだ大木同士が互いに緑の葉をのばし合い、

繋がって絡み合い、さらに重なり合ってアーチを形作り、

地面にこれ以上ないほどの陰を落とす。




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こうして出来上がった幾つかのトンネルが、

南の島の強烈なコントラストの中に涼しい気配を生み、

つかの間、散策する人々の姿を飲み込んではそっと送り出してゆく。




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緑と陰のトンネルの向こうには、

夏雲を抱いた赤瓦の集落や鮮やかな紺碧の海、

生命の息吹に輝く自然が顔を覗かせている。




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そんな真夏の世界を前にしながら、

なかなか木陰から前へ進めない私を追い抜いて、

わずかに日陰で冷やされた風が

心地よく吹き抜けていった。




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by amboina | 2010-05-14 02:56 | 八重山

マヤー小の世界

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動物の中で猫が特別に好きなわけではない。

ただ気が合う生き物だな、と思っている。

相手がどう感じているかは知らないが、ただ何となくそう思う。




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これまでの人生、動物とともに暮らした時間は長い。

愛犬とは15年過ごしたし、亡母が拾ってきた猫とも8年を過ごした。

我が家のベランダには、今でも亡き飼い猫と仲の良かった野良猫達が

近所付き合いでもしているかのように訪れる。




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私は彼らに餌を与えたりはしないし、彼らもねだったりしない。

むやみに触らないし触らせてもくれない。

ただお互い、午後のひとときをのんびり近くで過ごすだけだ。




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島のマヤー小たちともそんな感じで付き合っている。

確かに地元の猫達より人間に寛容で慣れてはいるが、

基本的に距離感は変わらないつもりだ。




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しかし、どうしても彼らに近付きたくなる時もある。

それまで長閑に欠伸をしていた表情が急に引き締まり、

とりたてて何もない方向を鋭く凝視する瞬間だ。

ヒゲをびんと立て、耳だけはこちら向けてじっと動かない。

そんな最優先モードが切り替わったときの彼らの姿を見ると

ついいつもの距離感を破ってしまいたくなる。




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「何を見つめて、何を探っているのだろう」

きっと何かの気配や小さな音に反応しただけだ。

だが、その場に膝をつき、両手をついて

猫と同じ高さでその視線の先を追ってみたい

という誘惑に逆らえない。




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眺めてみたところで、

何も発見できはしないことは分かっている。

一緒の空間を共有していても、

猫と人間は別々の次元に生きているのであって

見ている世界は全く違うのだから。




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by amboina | 2010-05-12 03:24 | 八重山

軽トラの似合う島

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沖縄の離島はどこでもそうかもしれないが、

もっとも頻繁に使用されている自動車は軽トラックだと思う。

一家に一台とは言わないまでも、

それに近い数が島のあちこちを毎日走り回っている。




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荷物の運搬はもちろん、子供の送り迎えから買い物、

果ては逃げた牛を追いたてる手段として、

軽トラックは島民の足となり手となって活躍している。




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「ギアを3速に入れる前に家に着く」

面積6k㎡弱のこの島では、冗談半分にこんなことを言う人も多い。

港の駐車場や、集まりのある時の公民館前などは

さながら軽トラックの見本市のようだ。




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さらに、舗装された道より珊瑚の砂道が圧倒的に多いこの島で

軽トラは牧草地を走り、砂浜を走り、時には道なき森にも分け入っていく。

当然、その痛み方は凄まじい。

およそ考えられる全ての傷が見て取れる。



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しかしどんなにくたびれていようが、汚れていようが

この島を今日も元気に疾走する軽トラたちは、

フェラーリよりも素敵でポルシェより魅力的に見えるから不思議だ。




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by amboina | 2010-05-11 14:27 | 八重山

夢の樹

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島でよく見かける鳥に鷺(サギ)がいる。

真っ白な体をした体長50センチほどの野鳥だ。

海辺の波打ち際では抜け目なく小魚を狙い、

牧草地では飼育牛の背に停まって、飛び交う虫を狙っている。




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ある時、写真好きな島人が興味深い話をしてくれた。

この島の鷺達は夜になると、ある決まった場所に集まり朝を待つらしい。

牧草地の茂みや、海辺の林などにいくつかの寝床をもっているという。

だが、彼がある日みつけたというその場所は、

なんとも私の想像力をかきたてる不思議な場所だった。




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今は森の奥に埋もれる、遥か昔に捨てられた集落跡に

一本の巨大な老木が立っている。

夕暮れになると、鷺達はその老木をめざして群集まり、一晩羽根を休めるというのだ。

その光景は、まるで巨木に真っ白な実が実り繁っているようで壮観だという。




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そして面白い事に、この木は時々姿を隠すらしい。

場所も道も分かっているし、たくさんの鳴き声もするのに

いざ見に行くとどうしても見つけられない時がある。

夕暮れ時であたりは暗いし、滅多に人も踏み込まない場所だから

そうしたこともあり得なくはない。

それでも、なんとも不思議な話だと思った。




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あの木は神様が護っているのかもしれない。

だから鷺も安心して集まってくるのだ。

私にこの話をしてくれた島人はそう言って笑った。

いつでも見て良いものではないんだと。



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夜、集落の外れの深い森を眺めて思う。

満月の明かりの下、ひしめき合う純白の白鷺達を

奇妙な果実のように実らせた老木の姿を。




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私もいつの日か、夢のようなその木を見ることができるだろうか。

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by amboina | 2010-05-10 14:01 | 八重山

威風堂々


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沖縄民謡に欠かせない音色の一つに三線という楽器がある。

三線とは黒木の竿に錦蛇の皮を張った、三味線の源流にあたる弦楽器だ。

ある時、ある偶然から繋がった不思議な縁の先で

その三線(三弦)の世界を極めようとする偉大な人物と出逢った。




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南海の果て与那国島に生まれ、少年時代からすでにプロとして活躍。

沖縄民謡と沖縄ポップスの黎明期には、その卓越した技量をもって世界各国を巡り

沖縄三弦の魅力と可能性を世に広めた生粋のアーティストである。




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一見して厳しく難しい顔。

音楽に関しては一切の妥協を許さないプロフェッショナルな姿勢。

初めて顔を合わせた時は正直緊張して挨拶もできなかった。




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その彼がひとたび三弦を奏ではじめると、

ステージ周辺の空間がにわかに振動しはじめる。

深く伸びのある歌声と、圧倒的な技量が紡ぎだす音楽世界が

瞬間的に観客を魅了し、虜にしてしまう。




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そんな彼の「音」に惹かれて、私のライブ通いの日々がはじまった。

やがて会話を交わすようになり、今では親しく付き合うまでになったが、

今でも初めて演奏を聴いたときの衝撃は薄れない。




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彼の歌声には、私ごとき「にわか沖縄かぶれ」には知りようもない、

深い生まれ島への思いが詰まっている。

そして彼の三線には、三弦と共に生きてきた自分自身への

揺らぎのない自信が満ち満ちているように感じる。




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by amboina | 2010-05-08 06:21 | アーティスト

旅の終わり

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長い旅も終わり、やがて島を去る日がやってくる。

当然いつかは帰らないといけないわけだが、

島に行く日を指折り数えて過ごした長い時間に比べると、

それはあっけなく、突然にやってくる。




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荷物をまとめ、港で船を待つ僅かの時間。

身体から「まだ帰りたくない」という未練が少しづつ抜けていき、

「またくればいい」という心地よい脱力感が満ちてくる。

高速船の最後部で、真っ白な航跡と飛沫の彼方に遠ざかる島影を見送ると、

気持ちは自然にこれから戻る地元での生活に切り替わっていった。




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だが、主島のターミナルを抜け

空港へ向かうタクシーに乗り込む頃になると、

毎回必ず沸き上がってくる別の感慨がある。




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自分のいなくなった島では、そろそろ夕食の支度がはじまっているだろう。

気の早い島人が早くも一本目のビールを開けているかもしれない。

民宿の老夫婦は今日も仲良くゲートボールに出かけただろうか。




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疎外感や寂寥感ではない。

むしろほのぼのと胸の内に広がる、柔らかで優しい感慨だ。

そんな想いは、空港に着きチェックインを済ませ、

これから自分を現実世界に連れ戻してくれる翼が飛び立つまで、

途切れ途切れに続く。




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シートベルトの装着サインが消えた頃。

座席の上で強引に身体をねじ曲げ窓の外を振り向くと、

つい何時間か前まで自分が立っていたその島が

夕陽に染まった大海にぽつんと浮いていた。




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by amboina | 2010-05-07 01:31 | 八重山

アコークロー

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中世ヨーロッパのドイツでは満月のことを

「天の覗き窓」と呼んだという。

夜空に輝く眩い円形を、神のあけた覗き窓に例えたのだそうだ。

そういえばと、あらためて眺めてみると

子供の頃に濡らした指であけた障子の穴に似ていなくもない。




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沖縄では「アコークロー」という、

マジムンと呼ばれる魔物が出没する時刻があるのだそうだ。

大方は夕方や黄昏時の頃を指すらしいが、

天に開いた円い覗き窓のような月の浮かぶ夜なども、

いかにも禍々しく立派に妖しい時間と言えるだろう。



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誰一人歩いていない集落の道をぽつんと照らす街灯。




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闇の向こうに聳える瓦屋根の巨体。




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ひとたび月の光を浴びれば、

見慣れた電柱の丸木も、海辺の軽トラックさえも

それなりに恐ろしいマジムンに見えてくるから不思議だ。




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などとぼんやり考えながら

月を見上げて歩いている場合ではないのかもしれない。

天の向こう側にいる得体の知れない何者かが

今もじっと、こちらの様子を伺っているかもしれないのだから。




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by amboina | 2010-05-06 01:59 | 八重山

働き者の肖像

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この島の観光業の目玉は、水牛車だ。

ガイドの語る島の歴史や名物の説明を聞きながら、

昔ながらの沖縄の風情を残した集落内を

水牛がひく屋形車でのんびりと廻る。




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その昔、水牛は耕作や移動に使役されていたという。

それ以前に使われていた牛よりも丈夫で、

足場の悪い畑などでの作業に適していたらしい。

今では農作業に使われることはなくなったが、

それでも島のあちこちで観光客相手に健気に働いている。




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そして彼らは意外と個性的だ。

一見しては見分けがつかないようにも見えるが、

よく観察すると、角の長さ、体格、歩く速度がそれぞれに違う。

性格も人間のように多種多様で面白いらしい。




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さらに毎日多くの観光客を載せて牛車をひくその姿は、

角の付け根にアカバナなどを飾られて、中々のフォトジェニックだ。

しかし木陰でひととき微睡む時の顔はなんとも穏やかで、

本来の水牛としての姿が垣間見える。



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夕暮れ時、集落の外れへ連れられる水牛達とよく出会う。

一晩の休みをとりに、空き地や外周道路沿いの草地へ向かうのだ。

借りの寝床で腹一杯に草を食み、星空の下で眠り、

明日になれば再び重い牛車を曳く仕事が待っている。




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この島では、ひとたび歩き出せば

いつでも働き者の彼らに会うことができる。




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by amboina | 2010-05-04 13:41 | 八重山

永遠の正午

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島を潤す短い梅雨が明けて、

若夏と呼ばれる季節をすぎると

大きく固い塊のような真夏がやってくる。




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太陽が天頂に上り、時間が停まってしまったような午後。

容赦のない日差しに影は真下で押し固まって動かない。

絶えた風を求めて、熱い空気が逃げ場のない身体に纏わりつく。




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群青を超えた濃紺の空の下

傍らを通り過ぎた明るい笑い声がパタリと止んだ。

ふたりの女性が、水平線に連なる巨大な積乱雲の山脈を眺めている。




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初めて目にしたのだろうか。

果てしなく広がる南の島の、真夏の海を前に

彼女達はしばらく立ち尽くし

次の一歩を踏み出せないでいた。




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by amboina | 2010-05-03 12:05 | 八重山

火の鳥

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島に持ち込んだ一番大きいレンズとカメラを抱え、

朝の集落を慌ただしく走る私の姿を見て

親しい島人が「何を撃ちにいくんだ」と言って笑った。




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「今、おるよ。ちょうどいい感じだよ」

少し前、私を柄にもない早起きに駆り立てたその電話の声は、

まるで大切な秘密を打ち明けているように、そっとそう囁いていた。



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どこからか、涼しい独特な鳴き声がこだましてくる。

早く早く、という手招きに甘えて遠慮なく上がり込んだその室内で、

優しい笑顔の老夫婦がそっと窓の外の一点を指し示した。

まだ薄暗い森の手前、

二本の小枝の先にその「火の鳥」はいた。




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リュウキュウアカショウビンという美しい渡り鳥がいる。

そんな話を聞いたのは、この島に通いだして3年ほど経ってからだった。

燃えるような赤いくちばしをもった全身朱色の夏鳥だいう。

野鳥の類いに興味はなかったが、火の鳥という異名にそそられて

一度はこの目で見てみたいと思っていた。




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それはまさに「火の鳥」だった。

緋色の翼を羽ばたかせ、枝から枝へと交互に飛び交いながら、

二羽のアカショウビンが寄り添うように巣を守っている。




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しばらく夢中でシャッターを切ってから振り返ると、

窓の外で涼しく鳴き交わす、あのアカショウビンのつがいのような、

睦まじい老夫婦がこちらを向いて優しく微笑んでいた。




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リュウキュウアカショウビン
by amboina | 2010-05-02 04:33 | 八重山